■フォント選びの基礎知識(2)
ウィンドウズで使われている「TrueType」フォントを、文字のデザインに注目して、わけてみましょう。
1. 明朝系・ゴシック系・セリフ系・サンセリフ系
文字のデザインから見ると、和文フォントは
- 明朝系
- ゴシック系
- その他系
にわけられます。
欧文フォントは
- セリフ系
- サンセリフ系
- その他系
にわけられます。
明朝系とセリフ系は“でっぱり”のあるフォントです。でっぱりのことを、明朝系では「うろこ」、セリフ系では「セリフ」と呼んでいます。
ゴシック系とサンセリフ系は“でっぱり”のないフォントです。ちなみに、サンセリフを英語で書くと「sans serif」。これは「セリフがない」という意味です。
その他系は、明朝系(セリフ系)とゴシック系(サンセリフ系)のどちらにもあてはまらないデザインのフォントで、ひとまとめにして「デザイン書体」と呼ばれています。書体(しょたい)=フォントだと、とりあえず考えておいてください。
文字のデザインにはとても手間がかかるので、文字数が少ないほどフォントの種類も多くなります。したがって、和文フォントよりも、欧文フォントのほうが種類は豊富です。
2. 欧文フォントのウェイト・スタイル・ファミリー
欧文フォントには、ウェイト・スタイル・ファミリーという考え方があります。
ウェイトは、文字の太さのこと。ほそいほうから、「ライト」(light)「ミディアム」(medium)「ボールド」(bold)――などの種類があります。
スタイルは、文字の傾きのこと。直立しているのが「ローマン体」、傾いているのが「イタリック体」です。イタリック体は、傾いたデザインを新たに作ったものなので、単にななめにしたわけではありません。
ファミリーは、ウェイトやスタイルはちがうけれどもデザインコンセプトは同じ、というフォントをひとまとめにした言い方。たとえば、ウィンドウズXPに入っている「ブックアンティーカ」(Book Antiqua)というフォントには、
- 「ブックアンティーカ」
- 「ブックアンティーカイタリック」
- 「ブックアンティーカボールド」
- 「ブックアンティーカボールドイタリック」
という4つのフォントがあって、これらをひとまとめにして「ブックアンティーカファミリー」と呼んでいます。
パーソナル編集長などのソフトでフォントを選ぶとき、表示されるのはフォントファミリーの名前だけです。ウェイトやスタイルごとのフォント名は、表示されません。したがって、ソフト側からは、そのフォントファミリーのなかみがどうなっているのか、ということはわからないんですね。
ウェイトやスタイルごとのフォント名を確認したいときは、コントロールパネルの「フォント」アイコンをダブルクリックして、フォントフォルダを表示させてください。
3. 和文フォントのウェイト・スタイル・ファミリー
和文フォントにも、欧文フォント同じように、ウェイト・スタイル・ファミリーという考え方があります。
ウェイトには、ほそいほうから、「細」(ほそ)「中」(ちゅう)「太」(ふと)――などの種類があります。なお、MS明朝のウェイトは「細」、MSゴシックのウェイトは「中太」にあたります。
スタイルには、直立している「正体」(せいたい)と、傾いている「斜体」(しゃたい)があります。和文フォントの斜体は単純に傾けたもので、傾いたデザインを新たに作ったものではありません。そのため、“斜体のフォント”というものはなくて、ワープロソフトやレイアウトソフトで傾けることになります。
和文フォントのファミリーは、ウェイトはちがうけれどもデザインコンセプトは同じ、というフォントをひとまとめにした言い方になります。
ただし、ファミリーを作れるような和文フォントは、あまり多くはありません(ソフトに付属する“おまけフォント”は、ファミリーを作れない“孤立した”フォントがほとんどです)。ファミリーを作れるようなフォントは、お金を出して買うしかない、というのが現状ですね。その代わり、基本的な明朝系・ゴシック系のフォントをファミリーでそろえておくと、統一感のあるデザインが実現できます。
4. パーソナル編集長の「太さ」「傾き」「変形」
パーソナル編集長では、文字の「太さ」「傾き」「変形」を指定できるようになっています。これらの指定は、1つ1つの文字に対しても行えますし、本文枠やコラム枠全体の文字に対しても行えます。
◆「太さ」
「太さ」には、「標準」「太字」――があります。
欧文フォントに対して「太字」を選ぶと、「ボールド」ウェイトのフォントが自動的に使われます。「ボールド」ウェイトのフォントがない場合は、そのフォントに対して単純に太くする処理が行われます。単純に太くする処理はみためがよくないので、「ボールド」ウェイトのないフォント(たとえば「センチュリー」)に対して「太字」は使わないようにしましょう。
和文フォントに対して「太字」を選ぶと、単純に太くする処理が行われます。みためがよくないので、和文フォントの「太字」は使わないようにしましょう。
◆「傾き」
「傾き」には、「標準」「斜体」「傾き指定」――があります。
欧文フォントに対して「斜体」を選ぶと、「イタリック体」のフォントが自動的に使われます。「イタリック体」のフォントがない場合は、そのフォントに対して、単純に傾ける処理が行われます。単純に傾ける処理はみためがよくないので、「イタリック体」のないフォント(たとえば「センチュリー」)に対して「斜体」は使わないようにしましょう。
和文フォントに対して「斜体」を選ぶと、右側におよそ20度傾ける処理が行われます。また、「傾き指定」を選べば、傾ける角度を自由に設定することができます。和文フォントの斜体には、みための問題はありません。ただ、あまり傾けすぎないほうがいいでしょう。
◆「変形」
「変形」には、「正体」「平体」(へいたい)「長体」(ちょうたい)――があります。
「平体」は、文字を上下に押しつぶしたようにひらべったくすること。「長体」は、文字を左右に押しつぶしたように細長くすること。どちらも割合を%で指定できます。
平体と長体は、欧文フォントに使うとみためがよくありません。したがって、和文フォントに使うようにしてください。
なお、新聞の本文では、平体80%程度の文字が使われています。なぜ平体をかけているかといえば、狭いたてぐみのスペースに、文字をできるだけたくさん入れるためです。