■フォント選びの基礎知識(1)

ウィンドウズで使われている「TrueType」フォントを、文字の幅に注目して、わけてみましょう。

1. 等幅フォント

すべての文字の幅が、全角なら全角、半角なら半角で決まっているフォントです。固定幅フォント、固定ピッチフォントともいいます。和文フォントでは「MS明朝」「MSゴシック」のほか、「DF〜」「HG〜」という名前のフォントが、欧文フォントでは「クーリエニュー」(Courier New)などが、それぞれ等幅フォントです。

等幅フォントの画像

図を見るとわかるように、等幅フォントでは、半角文字が全角文字のきっちり半分の幅になっていますよね。

「文字サイズと行送り」で書いたように、和文(=ひらがな・カタカナ・漢字)は、正方形のマス目のなかにデザインされています。この正方形のマス目をすきまなくならべていく、というのが和文の文字組みの基本。したがって、和文には等幅フォントを使います。一方、欧文では、等幅フォントは基本的に使いません。等幅フォントの欧文は、数式やプログラムのリストなど、使う場面がかぎられます。

2. プロポーショナルフォント

文字ごとに幅がちがっているフォントです。和文フォントでは「MSP明朝」「MSPゴシック」のほか、「DFG〜」「DFP〜」「HGP〜」「HGS〜」という名前のフォントが、欧文フォントでは「センチュリー」(Century)などが、プロポーショナルフォントです。

プロポーショナルフォントの画像

欧文にはプロポーショナルフォントを使うのが基本です。一方、和文の場合は、ちょっと複雑。というのも、和文プロポーショナルフォントには2つのタイプがあるからです。

3. 和文プロポーショナルフォントの2つのタイプ

上の2つの図の「でっす」の部分を見比べてください。

「MS明朝」の「でっす」は等幅になっていますが、「MSP明朝」の「でっす」はプロポーショナルになっている(つまり「っ」がつまっている)のがわかりますよね。

和文プロポーショナルフォントには

という2つのタイプがあります。

たくさんある和文プロポーショナルフォントのうち

となっています。下の図を見ると、AタイプとBタイプのちがいがわかるでしょう。

2つのタイプの和文プロポーショナルフォントの画像

和文プロポーショナルフォントは、次のような使いわけをしてください。

文字数が多くて文字サイズが小さい本文は「読む」ところ。こうした本文の部分でひらがなやカタカナがつまってしまうと、とても読みづらくなります。だから、「Aタイプ」の和文プロポーショナルフォントを使うわけですね。現在では、和文と欧文の混じった文章が多くなっていますから、和文の等幅フォントよりも、「Aタイプ」の和文プロポーショナルフォントを使ったほうがいいでしょう。

一方、文字数がすくなくて文字サイズがとても大きい見出し類は、読むというよりは「見る」ところ。こうした見出し類の部分では、ひらがなやカタカナがつまっているほうが見やすくなります。だから、「Bタイプ」の和文プロポーショナルフォントを“使ってもいい”わけです。ただし、わざわざ“使ってもいい”と書いているように、かならずしも「Bタイプ」の和文プロポーショナルフォントを使う必要はありません。みための好みで判断すればいいでしょう。

ちなみに私は、見出し類に「Bタイプ」の和文プロポーショナルフォントは使いません。というのも、「Bタイプ」の和文プロポーショナルフォントのつめ具合は、けっしてみためがいいとは思えないから。そんなわけで、見出し類のひらがなやカタカナをつめるときには、等幅フォントを使ったうえで、1字1字を手動でつめるようにしています。手動で文字をつめるときは、パーソナル編集長の「文字パネル」の「文字送り」を使っています。

文字パネルの画像

なお、「Bタイプ」の和文プロポーショナルフォントには、「MS UI Gothic」というフォントもあります。MS UI Gothicは、「1行により多くの文字を表示する為と半角のカタカナを使用しないために全角のひらがな、カタカナが全角に比べて2/3文字幅程度にデザインされています。その他の文字はMSPゴシックと全く同じです」(「リコーフォントメールマガジン」第4号 2005年5月11日)というフォント。つまり、MS UI Gothicのひらがなとカタカナは、正方形のマス目のなかデザインされていないんですね。

「UI」がユーザーインターフェースの略であることからもわかるように、MS UI Gothicは、ウィンドウズの画面表示用のフォントです。したがって、印刷物には使わないのがふつうです(現実には、使っているケースもあるんですが、みっともないからやめたほうがいいでしょう)。