■デジタル画像の解像度
デジカメでとった写真をパーソナル編集長のイメージ枠に読み込む……なんてことは、みなさん、ごくふつうにやってますよね。では、デジカメ写真の大きさ(画素数)はどうしてますか? デジカメ写真などのデジタル画像を印刷するときには、画像の「解像度」が問題になります。
ここでは、なにかと複雑なデジタル画像の解像度について、まとめておきましょう。いちおう、パーソナル編集長を使っている人向けに書いていますが、使っていなくても役に立つだろうと思います。
1. デジタル画像は「画素」(ピクセル)から成り立っている
まずは、デジタル画像のしくみから。
左の図を見てください。これは、デジカメ写真を1000倍に拡大表示したところです。見ればわかるように、正方形のマス目にくぎられていますよね。デジタル画像はこんなふうに、“これ以上わけられない”という正方形のマス目が集まってできています。そして、“これ以上わけられない”正方形のマス目のことを、「画素」(ピクセル=pixel)と呼んでいます。
デジタル画像は画素からできあがっているので、デジタル画像の“大きさ”を表すときには、画素の数(画素数)を使うのが一般的です。つまり、「よこ○ピクセル×たて○ピクセル」という言い方ですね。
さて、ふつうの感覚からすると、1つ1つの画素には「○ミリ×○ミリ」という物理的な大きさがあるように思えます。でも、デジタル画像は電子データですから、画素に物理的な大きさはありません。画素の物理的な大きさは自由に決められる、というのがデジタル画像の大きな特徴なのです。
2. 画素の大きさ=「解像度」
それでは、画素の大きさはどうやって決めればいいのでしょうか。1つ1つの画素の大きさを直接指定してもいいのですが、このやり方だと、あまりにも数値が小さくなりすぎます。そこで、「1インチあたりの画素数」というやり方で、画素の大きさを決めています。
画素の大きさを決める数値が「解像度」(resolution)。解像度の単位には「ppi」(ピーピーアイ=pixels per inch)が使われます。
3. 解像度の計算式をおぼえておこう
ある画像を出力(表示、印刷など)したときの解像度(画素の大きさ)は、以下のような式で求めることができます。
解像度(ppi)=画素数(ピクセル)÷しあがり寸法(インチ)
インチなどというローカルな単位を使っているのは不便なので、この式をメートル法に直しておきましょう。1インチ=25.4ミリですから、
解像度(ppi)=画素数(ピクセル)÷[しあがり寸法(ミリ)÷25.4]
したがって、
解像度(ppi)=画素数(ピクセル)×25.4÷しあがり寸法(ミリ)
この式から、画素数(ピクセル)やしあがり寸法(ミリ)を求める式も、みちびきだすことができます(式を変形すればいいですよね)。
画素数(ピクセル)=解像度(ppi)×しあがり寸法(ミリ)÷25.4
しあがり寸法(ミリ)=画素数(ピクセル)×25.4÷解像度(ppi)
これら3つの計算式を、しっかりおぼえておいてくださいね。
4. 印刷するときの解像度を計算してみよう
計算式をおぼえたら、実際に使ってみましょう。デジカメ写真をA4の用紙いっぱいに印刷するときの解像度を計算してみます。
デジカメ写真は、次のような画素数だとします(左の写真をクリックすると、もとの大きさのデジカメ写真が表示されます。私が撮影した写真なので、どうぞ自由にお使いください)。
- よこ……960ピクセル
- たて……1280ピクセル
A4の用紙は、次のようなサイズになっています。
- よこ……210ミリ
- たて……297ミリ
デジカメ写真とA4の用紙では、たて・よこの比率がちがっていて、A4の用紙のほうがすこし“たてなが”。サンプルのデジカメ写真は“たて位置”なので、ここでは、A4の用紙をたてに使って、幅いっぱいに印刷する(上下には余白ができる)、ということにします。
デジカメ写真を出力(この場合は印刷)したとき、よこのしあがり寸法は「210ミリ」で、デジカメ写真のよこの画素数は「960ピクセル」――。210ミリのなかに960個の画素を入れるわけですから、さきほどの計算式にあてはめると、
960(ピクセル)×25.4÷210(ミリ)=116(ppi)
よこ960ピクセル・たて1280ピクセルのデジカメ写真を、A4の用紙の幅いっぱいに印刷するときの解像度は116ppiである――ということがわかりました。
では、これくらいの解像度(=画素の大きさ)で、きれいに印刷することができるのでしょうか。この問いに答えるために、印刷のしくみをかんたんにおさらいしておきましょう。
5. 印刷で階調(濃淡)を表現するしくみ
デジタル画像の画素(ピクセル)は、階調(濃淡)を256段階(8ビット)で表現することができます。ところが印刷では、階調を「インクがつく/つかない」という2段階(1ビット=2値)でしか表現できません。
そこで、2段階表現の印刷でたくさんの階調を表現する方法がいくつか考え出されました。現在の主流となっているのは、次のような印刷方法です。
- オフセット印刷やレーザープリンターで使われている「網点(あみてん)処理」
- インクジェットプリンターで使われている「誤差拡散法」
どちらも、人間の目はあまりこまかいところまでは見えない(分解能に限界がある)、という性質をうまく利用しています。
◆網点処理
こまかい点の大きさで階調を表現する方法です。こまかい点のことを「網点」と呼んでいます。網点は、明るい部分では小さく、暗い部分では大きくなります。網点の密度は一定です。
網点の密度は「1インチあたりの網点数」で表し、単位は「線」(せん)=「lpi」(エルピーアイ=lines per inch)。線の数値が大きいほど網点の密度が高くなるので、階調をなめらかに表現できます。
オフセット印刷の線数(せんすう=線のさまざまな数値のこと)は、モノクロ印刷で133線、150線、175線、カラー印刷で150線、175線などが使われます。カタログや写真集など、より高い品質が求められる印刷物では、200線や300線といった線数が使われます。
レーザープリンターの線数は、モノクロ・カラーともに106線、150線などが使われています。
【レーザープリンターの最大線数】
レーザープリンターでは、印刷できるいちばん小さい点(ドット)をいくつか集めて、網点を作っています。
印刷できるいちばん小さい点(ドット)の大きさを決める数値が「プリント解像度」。プリント解像度の単位は「dpi」(ディーピーアイ=dots per inch)です。1200dpiのレーザープリンターでは、1インチあたり1200個のドットを印刷できます。
網点を作るときに使うドットの数が「階調数」。64階調のレーザープリンターでは、1つの網点を作るのに、64(=8×8)個のドットを使っています。
したがって、レーザープリンターの最大線数は、以下の式で計算することができます。
レーザープリンターの最大線数=レーザープリンターのプリント解像度(dpi)÷(階調数の平方根)
プリント解像度1200dpi、階調数64階調のレーザープリンターは、最大150線(=1200÷8)で印刷できる、ということになります。
◆誤差拡散法
こまかい点の密度で階調を表現する方法です。こまかい点は、明るい部分ではまばらに、暗い部分では密になります。こまかい点の大きさは一定です。
インクジェットプリンターの場合、誤差拡散法のこまかい点=印刷できるいちばん小さい点(ドット)、ということになります。ドットの大きさは「1インチあたりの点の数」で表し、単位は「dpi」。このdpiのことを(レーザープリンターと同じように)「プリント解像度」といっています。dpiの数値が大きいほど1つ1つのドットがこまかくなるので、階調をなめらかに表現できます。
インクジェットプリンターのプリント解像度としては、「よこ9600dpi×たて2400dpi」とか「よこ4800dpi×たて2400dpi」などが使われています。
6. 印刷に必要なデジタル画像の解像度は?
オフセット印刷やレーザープリンターと、インクジェットプリンターとでは、印刷方法がちがいます。したがって、印刷に必要なデジタル画像の解像度も、印刷方法によってちがってきます。
◆オフセット印刷やレーザープリンター(網点処理)での印刷に必要な解像度
ppiと線数(lpi)は、どちらも「1インチあたりの……」という数値。となると、「175線で印刷するときの画像の解像度は175ppiにしておけばいいのでは?」と考えがちですよね。
画像を印刷するときの解像度(ppi)を、印刷の線数を同じにするということは、「1つの画素を1つの網点で置き換える」ということ。しかし、このやり方で印刷したデジタル画像は、みためがぼやけて(カクカクして)しまいます。
なぜなら、デジタル画像の画素と、紙に印刷された網点とでは、表現できる階調の数がちがうから。デジタル画像の画素は256段階の階調を表現できますが、紙に印刷された網点には「にじみ」や「かすれ」が発生するため、とても256段階の階調(=網点の大きさ)を表現できません。ppi=線数とした場合、もとの画素が持っていたなめらかな階調はとてもあらくなり、結果として、みためがぼやけて(カクカクして)しまうのです。
階調のあらい網点ではありますが、画像全体として見ればぼやけて(カクカクして)いない、という処理の方法があります。それは「複数の画素を1つの網点に置き換える」というやり方。つまり、隣り合ったいくつかの画素の階調を平均して、1つの網点の階調(=網点の大きさ)に置き換えるやり方です。もちろんこのやり方でも、もとの画像のなめらかな階調をそのまま表現することはできません。しかし、人間の目はあまりこまかいところまでは見えませんから、このやり方でも十分きれいに見える、というわけです。
複数の画素とは、「2画素×2画素」「3画素×3画素」「4画素×4画素」……といった「n画素×n画素」。「n画素×n画素」にするのは、もとの画像と印刷した画像のたて・よこの比率を崩さないため。たいていの画像では「2画素×2画素」で十分ですが、絵柄のこまかい画像では「3画素×3画素」くらいにしたほうが、よりなめらかなみためになります。
ここまで説明すれば、オフセット印刷やレーザープリンター(網点処理)での印刷に必要な解像度がわかるでしょう。もとの画像の「2画素×2画素」か「3画素×3画素」を1つの網点に置き換えればいいので、
オフセット印刷やレーザープリンター(網点処理)での印刷に必要な解像度=「印刷するときの線数×2(〜3)」ppi
となります。
【印刷に必要な解像度から、しあがり寸法を計算する】
さきほどの解像度の計算で使ったデジカメ写真は、よこ960ピクセル×たて1280ピクセルで、A4の用紙の幅いっぱいに印刷するときの解像度は116ppiでした。
116を2でわると58。したがって、よこ960ピクセル×たて1280ピクセルのデジカメ写真をA4いっぱいに印刷する場合、せいぜい60線くらいで印刷するのが限界で、カラーのオフセット印刷で標準的に使われる175線で印刷しようとするとぼやけて(カクカクして)しまう――ということになります。ちなみに、一昔前の新聞のモノクロ写真は、60線で印刷されていました。
それでは、よこ960ピクセル×たて1280ピクセルのデジカメ写真を175線(したがって、350ppi)で印刷したいとき、いったい、どれくらいのしあがり寸法にすればいいのでしょうか。さきほどの計算式を使って、計算してみましょう。
よこのしあがり寸法=960×25.4÷350=69.7(ミリ)
たてのしあがり寸法=1280×25.4÷350=92.9(ミリ)
よこ960ピクセル×たて1280ピクセルのデジカメ写真を350ppiで印刷する場合、「よこ69.7ミリ×たて92.9ミリ」までの大きさにしかできない、ということがわかりました。
【しあがり寸法から、画素数を計算する】
今度は、A4の用紙の幅いっぱいに350ppiで印刷するためには、どれくらいの画素数があればいいのか、ということを計算してみましょう。
よこの画素数=350×210÷25.4=2893.7
A4の用紙の幅いっぱいに350ppiで印刷するには、最低でも、よこ2894ピクセル以上は必要、ということがわかりました。
【印刷に必要な解像度としあがり寸法をソフトで計算させる】
こんなふうにいちいち計算をするのがめんどうなら、アドビ・フォトショップやアドビ・フォトショップ・エレメンツなど、デジタル画像の解像度を扱えるソフトウェアを使いましょう。
フォトショップ・エレメンツの場合、メニューの[イメージ]→[サイズ変更]→[画像解像度]を選びます。「画像解像度」というダイアログボックスが表示されたら、「画像の再サンプル」のチェックをはずしてください(このチェックをはずさないと、デジタル画像の画素数そのものが変わってしまいます)。
この状態で、解像度を「350」にすると、しあがり寸法(幅と高さ)の数値が変化して、「幅6.97cm、高さ9.29cm」となります。計算したのと同じ数値ですよね。
しあがり寸法をさきに指定すれば、今度は、解像度の数値が変化します。さまざまな画素数のデジタル画像(たとえば、人物の顔の大きさが一定になるようにトリミングしたたくさんのデジカメ写真など)を同じ大きさで印刷したいときには、しあがり寸法をさきに指定するといいでしょう。
しあがり寸法をさきに指定するとき、解像度の数値はバラバラでかまいません。印刷に必要な解像度を上回っていることだけ、確認しておいてください。
解像度の数値を変更したら、画像に解像度情報を記録するため、かならず保存しておきましょう。解像度情報の記録については、このあとで説明します。
◆インクジェットプリンター(誤差拡散法)での印刷に必要な解像度
誤差拡散法は、網点処理よりも階調再現性にすぐれています。したがって、印刷に必要な解像度も、網点処理よりも小さくてすみます。一般的には、180ppi程度で十分きれいに印刷できるようになっています。
さきほどの解像度の計算で使ったデジカメ写真を180ppiで印刷するなら、しあがり寸法は次のようになります。
よこのしあがり寸法=960×25.4÷180=135.5(ミリ)
たてのしあがり寸法=1280×25.4÷180=180.6(ミリ)
オフセット印刷やレーザープリンターで印刷する場合に比べて、倍近い大きさにしてもきれいに印刷できる、ということになりました。
なお、きれいに印刷できる解像度は、みなさんが実際に使っているインクジェットプリンターによってちがってきます。180ppiという数値はあくまでめやすとして考え、みなさん自身でいろいろと試行錯誤してみてください。場合によっては100ppi程度でも、それなりにきれいに印刷できるでしょう。
7. デジタル画像に解像度情報を記録する
電子データであるデジタル画像は、「ヘッダー」と呼ばれるファイルの先頭部分に、よこの画素数・たての画素数・よこの解像度・たての解像度――といった情報が記録されています。
ファイルのヘッダーを表示するには、バイナリエディタ(バイナリーエディター)という種類のソフトを使います。ここでは、「Stirling」(スターリング)というバイナリーエディターで、「bmp」形式の画像を表示してみました。
わけのわからない数値が並んでますが(^^;、電子データは16進数で表現された数値の集まりなので、こんなふうに表示されるんですね。
ウィンドウズで使われるbmpファイルは、先頭の54バイト(図の赤い枠で囲った部分)がヘッダーです。画素数や解像度の情報は、以下のような場所に記録されています。
- よこの画素数……19バイト目から22バイト目(16進数で「5B4」=10進数で「1460」。単位はピクセル)
- たての画素数……23バイト目から26バイト目(16進数で「870」=10進数で「2160」。単位はピクセル)
- よこの解像度……39バイト目から42バイト目(16進数で「EC4」=10進数で「3780」。単位は「1メートルあたりの画素数」。ppiになおすと「96」)
- たての解像度……43バイト目から46バイト目(16進数で「EC4」=10進数で「3780」。単位は「1メートルあたりの画素数」。ppiになおすと「96」)
ちなみに、bmpファイルはリトルエンディアン方式で記録されているので、16進数の数値は下位バイトから順番に記録されています。
なんだか頭が痛くなってきた、という人もいるかもしれませんが、大切なのは、デジタル画像の解像度情報は自由に変更して記録できる、ということ。この点をしっかりとおさえておいてください。
さて、デジタル画像に解像度情報を記録するときには、フォトショップ・エレメンツなどのソフトを使います。フォトショップ・エレメンツの場合、メニューの[イメージ]→[サイズ変更]→[画像解像度]を選びましょう。
「画像の再サンプル」のチェックをはずして、解像度の数値を変更します。画像のしあがり寸法が決まっているなら、幅と高さの数値を変えてもかまいません。こうしてファイルを保存すると、デジタル画像に新しい解像度情報が記録されます。
ただし、「gif」形式のように、解像度情報を記録することができない(ファイルのヘッダーに解像度情報が定義されていない)デジタル画像もあります。フォトショップ・エレメンツでは、解像度情報が記録されていない(数値としては「0」になっている)、または解像度情報を記録することができないデジタル画像の解像度は、「72ppi」として表示するようになっています。
8. パーソナル編集長で、デジタル画像の解像度情報を利用するには?
パーソナル編集長では、デジタル画像に記録した解像度情報を利用することができます。デジタル画像を読み込んだイメージ枠のうえで右クリックして、メニューを出してみてください。[原寸に戻す]という項目がありますよね。
[原寸に戻す]の「原寸」は、「解像度情報にもとづいたしあがり寸法」を意味しています。したがって、フォトショップ・エレメンツなどのソフトで、しあがり寸法に合わせた解像度情報を記録しておけば、[原寸に戻す]を選ぶだけで、イメージ枠の大きさを変更することができる――ということになります。
以下、デジタル画像の種類、解像度情報を記録できるかどうか、パーソナル編集長で[原寸に戻す]を選んだときのふるまい――について、まとめておきます。参考にしてください。
デジタル画像の種類 | 解像度情報を記録できるかどうか | パーソナル編集長で[原寸に戻す]を選んだときのふるまい |
---|---|---|
bmp | ○ | 解像度情報にもとづいたしあがり寸法になる |
gif | × | 96ppi相当のしあがり寸法になる |
jpg | ○ | 解像度情報にもとづいたしあがり寸法になる |
png | ○ | 96ppi相当のしあがり寸法になる(パーソナル編集長は、pngの解像度情報を読み込めない) |
tif | ○ | 解像度情報にもとづいたしあがり寸法になる |
解像度情報が記録されていない場合は、画像の種類にかかわらず、原寸=96ppi相当のしあがり寸法、となります。96ppiというのは、ウィンドウズの論理的な画面解像度を意味しています。
◆「画面解像度」について
「画面解像度」ということばが出てきてしまいました(笑)。せっかくなので、このことばについてもお話ししておきましょう。
デジタル画像やプリンターの「解像度」は、“これ以上わけられない”いちばん小さな構成単位の大きさを表す数値でした。“これ以上わけられない”いちばん小さな構成単位は、
- デジタル画像の場合は「画素」
- プリンターの場合は「印刷できるいちばん小さい点(ドット)」
ということになります。
ところが「画面解像度」といった場合、画面(=ディスプレイ)の画素(R・G・Bの3色をひとまとめにした小さな正方形)の大きさを表しているのではありません。もっと単純に、画面に表示できる画素数を表しています。「このディスプレイの画面解像度は、よこ1024ピクセル×たて768ピクセル」といった言い方を、みなさんも聞いたことがありますよね。
したがって、デジタル画像やプリンターの解像度と、画面の解像度とでは、同じ「解像度」ということばでも意味がすこしちがう、ということをおさえておいてください。
さて、私たちが使っているディスプレイの画素の大きさは、ディスプレイのサイズ(対角線の長さ。液晶ディスプレイの場合、12.1型とか15型などの「型」の数値。単位はインチ)と画面解像度によってちがってきます。たとえば、「12.1型・1024ピクセル×768ピクセル」の画素の大きさは0.240ミリ、「15型・1024ピクセル×768ピクセル」の画素の大きさは0.298ミリ――。
実際に使われるディスプレイの画素の大きさはまちまち、ということがわかりますよね。そこでウィンドウズでは、論理的な画面解像度、という考え方を導入しました。つまり、ディスプレイの標準的な画素の大きさを仮定した、ということ。ウィンドウズは、論理的な画面解像度を「96ppi」と仮定しています(通常はdpiという単位を使いますが、画素の大きさなので、ppiとしておきます)。そして、「論理的な画面解像度」といったときの「解像度」は、ふたたび、“これ以上わけられない”最小構成単位の大きさ、を意味するようになったのでした。
なお、ディスプレイの画素の大きさは、三平方の定理(ピタゴラスの定理)を使って求めることができます。くわしくは、このサイトのコンテンツ「ざっきちょー」の「自分の目に液晶ディスプレイを合わせるために」をどうぞ。ちなみに、「25.4÷ディスプレイの画素の大きさ(ミリ)」で、画素の大きさをppiに換算することができます。ウィンドウズの論理的な画面解像度=96ppi=0.265ミリに近い液晶ディスプレイは、「17型・1280ピクセル×1024ピクセル」であることがわかります。
9. 印刷するときの解像度を無視してもいいデジタル画像
なにかのソフトの操作マニュアルを作ろうとして、ソフトの操作画面やアイコンなどを使いたい、ということもあるでしょう。
ソフトの操作画面やアイコンなど、ウィンドウズのユーザーインターフェース画面は、基本的に「ドット絵」です。つまり、1つ1つの画素を積み上げるようにして、文字や絵柄が作られているんですね。したがって、印刷するときの解像度がどんなに低くても、まったく問題はありません。また、フォトショップ・エレメンツなどのソフトでレタッチなどをする必要もありません(むしろレタッチなどをしてはダメです)。
10. 印刷するときの解像度が1200ppi以上でなければダメなデジタル画像
古い書籍の復刻版を作ろうとして、書籍のページをスキャナで取り込む、ということもあるでしょう。スキャナで取り込んだ画像は、
- なにも書かれていない無地の部分にはインクがつかない
- 文字の部分にはインクがつく
という2段階の表現で印刷されることが、のぞましいですよね。
2段階の表現で印刷したいときは、「スキャンしてできた画像を印刷するときの解像度が1200ppi以上になるように」、スキャナの取り込み解像度を調整してください(あと、スキャナの取り込みモードを、白黒とかモノクロにすることをお忘れなく。グレースケールや写真などではダメです)。
スキャナの取り込み解像度は、「読み込み解像度」とか「出力解像度」などとも呼ばれます。スキャナのマニュアルによると、取り込み解像度の単位は「dpi」となっていますが、デジタル画像(の画素)を作るときの比率ですから、「ppi」を使ったほうがわかりやすいでしょう。
A4の用紙を1200ppiでスキャンすると、どれくらいの画素数のデジタル画像になるのか、さきほどの計算式にあてはめてみましょう。
よこの画素数=1200×210÷25.4=9921(ピクセル) たての画素数=1200×297÷25.4=14031(ピクセル)
こうしてできたデジタル画像をA4いっぱいに印刷するのであれば、印刷するときの解像度も1200ppi、ということになります。ところが、A4よりも大きい(B4やA3などの)用紙いっぱいに印刷するのであれば、印刷するときの解像度は1200ppiよりも小さくなってしまいます。
したがって、最終的に印刷する大きさを考えて、「スキャンしてできた画像を印刷するときの解像度が1200ppi以上になるように」、スキャナの取り込み解像度を調整するわけです。
2段階の表現で印刷する必要がなければ、1200ppi以上にこだわる必要はありません。ただし、印刷するときの解像度を低くすると、文字の部分がぼやけて(カクカクして)しまいます。
左の図は、スキャナの取り込み解像度による印刷結果のちがいです。
文庫本のページを350ppi(上)と1200ppi(下)で取り込み、600dpi(106線)のモノクロレーザープリンターで、原寸印刷しました。印刷した用紙をデジカメでマクロ撮影し、部分を切り取っています(用紙の無地の部分が完全に白くなっていませんが、まあ、かんべんしてください(^^;)。
見てわかるように、350ppiで取り込んだほうは文字がかすれてしまっていますが、1200ppiで取り込んだほうは文字が(それなりに)きちんと印刷されています。2段階の表現で印刷したいときは、解像度が1200ppi以上でないとダメ、ということがわかるでしょう。
おわりに
ここまでの説明でおわかりのように、デジタル画像の解像度は、印刷(特にオフセット印刷)するときに意識しなければならない数値です。印刷以外で、デジタル画像の解像度を意識する必要は(ほとんど)ありません。
たとえば、デジカメ写真を縮小してウェブサイトに掲載したいとき。こんなときに考えなければならないのは、しあがりの画素数です。
ブラウザーはデジタル画像を、XHTMLで指定された画素数(XHTMLで指定されていなければ、もとの画素数)で表示しますから、ディスプレイで見てみばえがよくなるように縮小後の画素数を決めればいい。あたりまえですよね。
にもかかわらず、「ウェブサイトに掲載する画像は72ppiで……」などという言い方がいまだに存在しているのは、ちょっとこまった事態です。
「ウェブサイトに掲載する画像は72ppiで……」という言い方は、まったく意味をなしません。なぜなら、
- ブラウザーはデジタル画像の解像度情報を解釈しない。したがって、デジタル画像の解像度情報がいくつであっても、表示にはなんの影響もない
- ブラウザーがもとの画素数で表示したときの解像度は、表示しているディスプレイの画素の大きさと等しくなる。たとえば、「15型・1024ピクセル×768ピクセル」の液晶ディスプレイで表示したデジタル画像の解像度は85ppiとなる(もとの画素数で表示した場合)。したがって、72ppiという数値に意味はない
から。
というわけで、このページの情報が、デジタル画像の解像度について知りたいみなさんのお役に立てば、うれしいかぎりです。