■パソコンで入力できる約物(2)
ここでは、パソコンで入力できる約物(やくもの)のうち、「かっこ類」について説明します。
1. かっこ類
かっこ類には、次のようなものがあります。
記号類 | よびかた* | シフトJISのコード番号 | たてぐみでの使用 | ‘ ’ | 左シングル引用符・右シングル引用符(コーテーションマーク) | 8165・8166 | × |
---|---|---|---|
“ ” | 左ダブル引用符・右ダブル引用符(ダブルコーテーションマーク) | 8167・8168 | × |
( ) | 始め小括弧・終わり小括弧(かっこ、まるかっこ、パーレン) | 8169・816A | |
〔 〕 | 始めきっこう括弧・終わりきっこう括弧(きっこう=亀甲) | 816B・816C | |
[ ] | 始め大括弧、始め角括弧・終わり大括弧、終わり角括弧(ブラケット、角ブラケット) | 816D・816E | |
{ } | 始め中括弧・終わり中括弧(中かっこ、なみかっこ) | 816F・8170 | |
〈 〉 | 始め山括弧・終わり山括弧(やまがた、やまかっこ) | 8171・8172 | |
《 》 | 始め二重山括弧・終わり二重山括弧(にじゅうやまがた) | 8173・8174 | |
「 」 | 始めかぎ括弧・終わりかぎ括弧(かぎ) | 8175・8176 | |
『 』 | 始め二重かぎ括弧・終わり二重かぎ括弧(にじゅうかぎ) | 8177・8178 | |
【 】 | 始めすみ付き括弧・終わりすみ付き括弧(すみつきパーレン、くろきっこう=黒亀甲) | 8179・817A |
*「よびかた」は、「JIS X 0208:1997(7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化漢字集合)」(日本規格協会『JISハンドブック 情報処理 用語・符号・データコード編』日本規格協会 1999年)の「日本語通用名称」にしたがいました。( )のなかに入れているのは、出版・印刷業界などで使われている通称です(日本エディタースクール編『標準 編集必携』〔日本エディタースクール出版部 1987年〕、デザイン編集室編『編集ハンドブック第6版』〔ダヴィッド社 1999年〕を参考にしました)。
「たてぐみでの使用」に×がついている約物は、ふつう、たてぐみでは使いません。もっとも、最近では、ダブルミニュート(いわゆる「ちょんちょん」)のかわりとしてダブルコーテーションマークを使う、というむりやりな使い方も見かけます。あまり、みためのよいものではないですね。
2. ダブルミニュート
ここにあげたかっこ類以外に、「ダブルミニュート」(いわゆる「ちょんちょん」とか「ひげかっこ」)とよばれる約物があります。ダブルミニュートは、新聞や雑誌、書籍などで、ことばを強調するときによく使われてますよね。
ダブルミニュートはシフトJISでは定義されていません。しかし、字形自体は「8780・8781」のコード番号に割り当てられています。いわゆる「NEC外字」ですね。
したがって、「8780・8781」のコード番号を入力してやれば、ウィンドウズ上で入力することができます。
ただし、図のような“きちんとした字形”をもっているTrueTypeフォントはかぎられます(図で使っているのは「モトヤEXシーダ3」というTrueTypeフォントです)。
MS明朝、MSゴシック、HG〜シリーズのTrueTypeフォント、DF〜シリーズのTrueTypeフォントなど、数多くのTrueTypeフォントがこの図とはちがった“きちんとしていない字形”になってしまいます。みなさんのもっているTrueTypeフォントでどんなふうに表示されるか、ぜひ、試してみてください。
ちなみに、私がもっているTrueTypeフォントのうち、ダブルミニュートが“きちんとした字形”になっているのは、次のようなものでした。参考までにどうぞ。
- イワタ中明朝体新がな
- イワタ太明朝体新がな
- イワタ特太明朝体新がな
- イワタ中ゴシック体新がな
- イワタ太ゴシック体新がな
- イワタ特太ゴシック体新がな
- イワタ新ゴシック体R
- イワタ新ゴシック体B
- イワタ新聞明朝体
- イワタ新聞ゴシック体
- ヒラギノ明朝体4
- ヒラギノ明朝体6
- ヒラギノ明朝体8
- ヒラギノ角ゴシック体4
- ヒラギノ角ゴシック体6
- ヒラギノ角ゴシック体8
- モトヤEX明朝3
- モトヤEXシーダ2
- モトヤEXシーダ3
- モトヤEXシーダ5
- リョービ本明朝L新がな
- リョービ本明朝L新小がな
- リョービ本明朝M新がな
- リョービ本明朝M新小がな
- リョービ本明朝B2
- リョービ本明朝E2
- リョービゴシックL2
- リョービゴシックM2
- リョービゴシックB
- リョービゴシックE2
なお、「JIS X 0208:1997」では「参考」として、コーテーションマークのたてぐみ用字形に「シングルミニュート」(ダブルじゃないミニュート)、ダブルコーテーションマークのたてぐみ用字形に「ダブルミニュート」――をあげています。ただし、あくまでも「参考」なので、「JIS X 0208:1997」の規定というわけではありません。
とはいえ、「コーテーションマーク類をたてぐみで使うときはミニュート類にしたほうがいい」という考え方があるんでしょう。
私も、この考え方には賛成です。たてぐみではダブルミニュートを使って、よこぐみではコーテーションマーク類を使いましょう。しつこいようですが(笑)、たてぐみでむりやりコーテーションマーク類を使うようなみっともないことは、しないようにしてくださいね。
3. かっこ類についての豆知識
かっこ類についての、ちょっとした情報をまとめておきます。
◆「」と『』の使い方
「」は、次のようなときに使います。
- 会話を引用するとき
- なにかの資料を引用するとき
- ことばを強調するとき
- 記事タイトル
- 論文タイトル
一方、『』は、次のようなときに使います。
- 「」のなかで「」を使いたいとき
- 「」で引用した文章中で「」を使っているとき
- 新聞タイトル
- 雑誌タイトル
- 書籍タイトル
特に、「記事タイトル・論文タイトル」『新聞タイトル・雑誌タイトル・書籍タイトル』という使いわけは、学術的な分野では基本です。おぼえておくと便利でしょう(新聞では、論文タイトルでも書籍タイトルでも、区別しないで「」を使っています)。
◆かっこ類の順番
かっこ類には、使うときの順番があります。毎日新聞社編『改定新版 毎日新聞用語集』(毎日新聞社 2007年)によると、次のようになっていました。
- 「『』」
- (〈 〉)
要するに、かっこ類を“いれこ”にして使うときは、区別するためにちがうかっこを使いなさい、ということですね。新聞・通信社の決めている順番は、いちおうのめやすとしておいて、自分なりの順番を考えればいいでしょう。
なお、英語のコーテーションマーク類については、「オックスフォードルール」と「シカゴルール」とで、順番がちがっています(R. M. Ritter, The Oxford Guide to Style, Oxford University Press, 2002, p. 148.)。
オックスフォードルールでは、
- ‘“ ”’
という「シングル→ダブル」の順番になっていますが、
シカゴルールでは(また、イギリスの新聞でも)、
- “‘ ’”
という「ダブル→シングル」の順番になっています。
もっとも、日本語のかきことばでコーテーションマーク類を“いれこ”にすることは、あまりないでしょう(オックスフォードルールとかシカゴルールってなに?というひとは、「パソコンで入力できる約物(1)」で簡単に説明しておきました)。