■目に合う液晶ディスプレイを探し続けて

私がどれくらい“弱い目”の持ち主なのか、ひょっとしたら知りたいという人がいるかもしれません。私の液晶ディスプレイ経験について、ダラダラと書いておくことにしましょう。

■CRTぎらい

私がPCを使いはじめた1990年代のはじめごろ、デスクトップPCのディスプレイといえば、CRTがあたりまえでした。CRTにも目に合う・合わないがあって、目に合わないものはとことん目に合いませんでしたね。

目に合わなかったCRTとしては、NECのCanBeシリーズ付属の15型(型番はおぼえていませんが、OSはウィンドウズ3.1)、日本IBMのアプティバシリーズ付属の15型(こちらも型番はおぼえていませんが、OSはウィンドウズ95)、デルの15型(これまた型番はおぼえていませんが、OSはウィンドウズ98)――などがあります。

どのCRTも、作業をはじめてすぐに目が痛くなり、CRTやディスプレイドライバーであれこれ調整してもどうにもなりませんでした。せいぜい1〜3時間程度の作業なのに頭がずんずんと重くなり(片頭痛)、ほとんど吐きそうな状態に……。こうした経験のない人のためにいっておくと、「吐きそうな状態」というのは“もののたとえ”じゃありません。ほんとうにおなかがムカムカして吐きそうになるんです。

そんな体験をしていたこともあって(もちろん、場所をとらないということもあって)、私はノートPCのユーザーでした。当時の私にとって、ノートPCの液晶は基本的に“いいもの”。明るすぎると感じる機種もありましたが調整できる範囲でしたし、目に合わない液晶には、“まだ”めぐりあっていなかったからです。

■複数台買い替え経験(1)――目に合わない液晶とのであい

目に合わないから買い替える。1回の買い替えではすまなくて、何度も何度も買い替える……。そんな“複数台買い替え経験”のはじまりは1998年末〜1999年はじめ。ウィンドウズ98が快適に動くメインマシンを、という理由でノートPCを買い替えたときのことでした。ノートPCの価格が、まだそれなりに高かったころのお話です。

買い替えたのは以下の3台(カッコ内は、液晶ディスプレイのサイズ・解像度・画素ピッチ)。どれも新品です。

ThinkPad 235とThinkPad 535を売却した理由は、

というもの。「バックライトの光が目につきささるような感じがする」、というのはすこし説明が必要かもしれませんね。これは、“輝度を最低にして黒1色を表示しても、画面が白っぽく(=黒が浮いて)みえてしまい、まるでバックライトの光が漏れて目につきささるように感じられる”という状態。とても気持ちの悪い状態です。

目に合わせるために、いろいろなことをやりました。テキストエディターの表示色を変えてみたり(背景色#000080・文字色#FFFFFFから背景色#000000・文字色#C0C0C0へ。これでもダメだったわけですが)、フォントサイズをおおきくしてみたり(12ポイントから14ポイントへ)、液晶ディスプレイ用のOAフィルターをつけてみたり……。もちろん、ディスプレイの輝度は最低までさげましたし、ディスプレイドライバーのできる範囲で明るさなども調整しています(当時のノートPCのディスプレイドライバーでは、たいした調整はできませんでしたが)。さらにThinkPad 235に関しては、ネット上の情報を頼りに、液晶パネルのディップスイッチをいじったりもしました(みためはあまり変わりませんでしたね)。でも、けっきょくはダメ。2台とも、購入して2週間ばかりで売却しました。

3台目のFLORA210 NL1は、目に合わなくはないけれども、輝度を最低にしても明るすぎて疲れる、という感じの液晶でした。やっぱりダメかなあ、と思いかけていたところ、アップデートされたディスプレイドライバーでガンマ補正できる(RGB一括でしか調整できませんでしたが)、ということに気がつきました。

ガンマ値を「1」未満の「0.60」くらいにすると、あきらかに目に対する圧迫感がすくなくなります(ガンマ値はのちに「0.70」で運用するようになりました)。ガンマ補正によって、みための発色はひどいありさまになりましたが、FLORA210 NL1はなんとかメインマシンとして使えるようになったのでした。

このときの教訓は――

■複数台買い替え経験(2)――買い替えと改造と

FLORA210 NL1は、1999年はじめの時点ですでに古い機種でした。バリバリと使ってはいたものの、2年半もたつと、さすがに性能的な不満がおさえきれなくなります(なにしろ、MMX Pentium 133MHzですからね)。そんなわけで2001年7月、新しいメインマシンの買い替えを実行しました。

このとき買い替えたのは、以下の2台です。ノートPCの買い替えは高くつく、ということを学習していたので、どちらも中古です。

ThinkPad 240は、知り合いのものを短時間使わせてもらったことがあって、たぶんだいじょうぶだろう、と思って購入したのでした。ところが実際にはダメ。たぶん、液晶パネルがちがったんでしょう。ノートPCの場合、液晶パネルの供給元が1社とはかぎりませんから(つまり、おなじ機種でもちがう液晶パネルを使うことがある)、しかたないですね。

ThinkPad 240を売却した理由は、前とおなじです。念のため、再掲しておきましょう。

ディスプレイドライバーでガンマ補正ができたかどうか、もう、記憶に残ってません(できなかったのでは、と思いますが……)。いずれにせよ、黒っぽい画面にしても微妙に目が疲れて気持ち悪くなり片頭痛になる、という状況では、メインマシンとしては使えません。けっきょく、購入してすぐに売却しました。

さてどうしようか、というときに思いついたのが、前にダメだったThinkPad 235です。ThinkPad 235はFLORA210 NL1のきょうだいマシン(設計チームがおなじ)で、ディスプレイドライバーもおなじような機能を持っています(つまり、ガンマ補正ができる)。すでに古い機種になっていたThinkPad 235を入手して、ガンマ補正でなんとかメインマシンとして使えるようにしました。1998年末の時点でもうすこし待っていれば、ディスプレイドライバーがアップデートされて、よけいなお金を使わずにすんだのに……と思わずにはいられません。後知恵ですけどね。

いくらかこまったのは画素ピッチです。0.239ミリというThinkPad 235の画素ピッチは、私の目には小さいんですね。そこで、ネット上の情報を頼りに、FLORA210 NL1のディスプレイ部分をThinkPad 235にうつしかえることにしました。きょうだいマシンならでは、といったところでしょうか。ディスプレイをうつしかえていたのは約1年ほどで、その後はやはり800×600の解像度がほしくなって、もとのディスプレイにもどしています。ただし、目はいくらか疲れるようになりましたし、2年半くらい使った最後のほうでは画面をみるのがいささか苦痛になりました。

このときの教訓は――

■複数台買い替え経験(3)――ノートPCにさよならを

このサイトの「■自分の目に液晶ディスプレイを合わせるために」では、ThinkPad X22について言及しています。ThinkPad X22は、ウィンドウズXPがそれなりに動くメインマシンを、という理由から2004年11月ころに買い替えたもの。このときにも複数台買い替え経験をしました。

買い替えたのは、以下の2台。いうまでもなく、どちらも中古です。

ThinkPad X20のディスプレイドライバーは、調整機能はあるのにこまかく調整できないという最悪のもの。CPU冷却ファンがつねにコトコトと音を出しているのも気になって、購入してすぐに売却しました。まだ、PowerStripの存在を知らなかったんですね(もっとも、X20でPowerStripは動かなかったんじゃないかと思います)。

でもって、後継機種のThinkPad X22を購入して、こちらはPowerStripで調整。なんとかメインマシンとして使えるようになりました。ディスプレイドライバーでガンマ補正してきた歴代のメインマシンとおなじく、みための発色はひどいありさまとなりましたが。

ThinkPad X22は5年ばかり使いました。この間、以下の機種を新しいメインマシンとして購入したんですが(もちろん中古。ただし程度は極上で新品同様だった)、PowerStripで調整しても目に合わず、数週間で売却しています。

なんとまあ、またまたThinkPadですね(笑)。X31を売却した理由は、

ギラギラしているように感じられてピントを合わせづらい、というのは、液晶の表面処理の問題かもしれません。そうだとすると、もはや、目に合わせるのはムリですよね。

でも、なんとかX31を使いたかったんです。そこで、大枚をはたいて、キャリブレーションツール「i1Display 2」(アイワン・ディスプレイ2)を購入してみました。たぶんダメだろうな、とは思いつつも。

i1Display 2で調整すると、たしかに、それなりに“まともな”発色になります。色味の再現性を重視するような用途では、キャリブレーションツールは必須でしょう。しかし、“まともな”発色と、目に合うような発色は、まったく別物なのだ、ということを実感しました。i1Display 2で調整しても、X31を使えるようにはならなかったからです。ダメなものはダメでした。

このときの教訓は――

■複数台買い替え経験(4)――単体ディスプレイ6台すべて売却

ThinkPad X31がダメだということになって、私は、メインマシンにノートPCを選ぶのはやめよう、と決意せざるをえませんでした。なぜなら、たとえ中古であっても、目に合うようなノートPCを購入し続ける金銭的な余裕などないからです(もちろん、いまだにありませんが)。

また、ワイド型・高解像度(しかもグレア!)液晶の時代になって、目に合うような画素ピッチのノートPCがほとんどなく、あってもやたらでかくなるという現実も、ノートPCばなれに拍車をかけました。たとえば、「15.6型・1366×768ピクセル・0.253ミリ」ならなんとかなりそうですが、これのよこはばは400ミリ以上! ちょっとでかすぎです(使っている人にはもうしわけないですが)。

そこで、これまではサブマシンとしてきたデスクトップPCを、メインマシンとすることにしました。デスクトップPCは数年おきに自作していて、単体の液晶ディスプレイはナナオのL367(15型・1024×768ピクセル・0.298ミリ)を使っています。

L367はとても優秀で、L367側とディスプレイドライバー側でわずかに調整すれば、まったく目が疲れません。発色もそれなりにまともな範囲におさまります。話の種に、私がどんな設定で使っているのか、書いておきましょう。

さて、優秀なL367にも欠点はあって、問題なのは下部にスピーカーを搭載したデザイン。このデザインのため、高さがいくらか高くなってしまうんですね。机のうえで使うならまだいいんですが、冬場にコタツのうえで使おうとすると、ちょっとこまってしまいます(目線が微妙に上向きになるので)。

デスクトップPCをメインマシンとする以上、コタツのうえでも使えるような液晶ディスプレイが必要――ということで(いまから考えると、この考え方がまちがいのもとだったわけですが)、L367よりも高さの低い液晶ディスプレイを探すことにしました。2008年末から2009年なかばにかけてのことです。

このとき買い替えた液晶ディスプレイは、以下の6台です。新品もあれば、中古もあります。

6台ともすべて目に合わず、売却しました。それぞれの液晶ごとに売却した理由は微妙にちがうんですが、おおざっぱにまとめると、以下のようになります。

どの液晶も青みが強く、閉口しました(青みが強いのはノートPCの液晶だけ、と思っていたんですが、そうじゃないんですよね)。私の目の青に対する感受性が高いのか、それとも世間の人たちの目の青に対する感受性がにぶいのか、理由はよくわかりません。

そこで、i1Display 2でとりあえずまともな発色にして、その発色を基準にさらに目に合うように調整する。それでもダメなときは、ディスプレイドライバーやPowerStripで調整する――。だいたいこんなやり方で調整したんですが、けっきょくはどの液晶もダメでした。

せっかくなので、ディスプレイごとの短評も書いておきましょう。

LL-T1520-B
目にやさしいといわれるシャープASVパネル搭載。中古の程度がよくなかったためか、画面はしの黒ずみ多数。上下で色味がちがってみえる。そもそも浅くて白っぽい色味のため、バックライトの光が抜けてくるように感じられた。この「浅くて白っぽい色味」は、おそらくシャープに共通するもの。以前使っていたマルチメディアディスプレイ(アナログテレビ放送が視聴できるPC用ディスプレイ)「BL-M15X1」も、おなじような色味だった。こういう色味は目が疲れる。
S1501-BK
画面を表示した瞬間に目に圧迫感を感じた。色味を調整しても、圧迫感は変わらず。テキストエディター(背景色#000080・文字色#FFFFFF)で上下にすばやくスクロールすると、白色にみえるはずの文字がマゼンタ(あかむらさき)色にみえた。気持ち悪い発色。
VL-156SS
ひたすら青が強い。緑も強い。色温度を下げると、画面の上半分が赤かぶり、下半分が青かぶりした。LL-T1520-Bとはちがって、色が濃い。色が濃くて目が疲れた。
L375
中古の程度はさほど悪くなかったが、いちばん期待していたので、ナナオで液晶パネルを交換。しかし、パネルを交換しても、みえ方はさほど変わらなかった。緑と青が強い。上下で色味がちがってみえる。薄い膜を通しているような感じで画面がざらついてみえ、うまくピントを合わせることができなかった。
MV141AB
新品を店頭でみかけたときから覚悟はしていたが、「真っ青」といっていいほど青が強い。なんとか調整できるかと思ったが、どう調整しても、青かぶりを抜くことはできなかった。
RDT192WLM
ディスプレイ側で最低輝度にしても、どうしようもなくまぶしい。上下で色味がちがってみえる。画面の下側が微妙に明るくみえて、とても気持ちが悪かった。視野角がせまいからしかたないのかもしれないが、気持ち悪いものは気持ち悪い。

LL-T1520-B以外の液晶ディスプレイは、すべてTNパネルを搭載しています。TNパネルに目へのやさしさを求めるのはまちがい、という考え方もあるでしょう。たしかにそうなのかもしれません。でもね、L367のTNパネルは、私にとって問題ないのです。TNパネルだから目にやさしくない、とはいちがいにいえないでしょう。

同様に、ASVパネルだから目にやさしい、ともいちがいにいえないでしょう。程度のよくない中古ではありましたが、LL-T1520-Bは私の目に合わなかったわけですから。

いずれにせよ、L367は例外的なケースだった、ということだけがわかった複数台買い替え経験でした。

このときの教訓は――

■目に合う液晶ディスプレイはあるのか

こんなふうに私は、ノートPCと液晶ディスプレイにムダなお金を使ってきました。まなんだことはいくつかあるものの、まさに、お金をどぶに捨てるような複数台買い替え経験だった、といっていいでしょう。

次に新しい液晶ディスプレイを買うのは……いつになるんでしょうね。もう、新しい液晶ディスプレイを買うことはないんじゃないかとさえ思いますが、現実には、いま使っているL367が壊れたら、新しい液晶ディスプレイを探さなくてはなりません。

そのとき、目に合う液晶ディスプレイとめぐりあえるのかどうか。めぐりあいたいとは願っていますが、たぶん、かなわぬ願いなんじゃないかとも予想しています。